Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。
「そんなにうれしかったのか?」
「だって、初めての贈り物ですし。それに――」
「それに、どうした?」
「――お揃いも、初めてだから」
そう言って顔を赤らめる真白は可愛らしくて。コイツは本当、どれだけオレの理性を飛ばそうとしてくるんだと思う。これぐらいで喜んでくれるなら、お安い御用だ。それがうれしうて、つい、真白の頭を引き寄せ髪にキスをした。さすがに電車の中だったからか、真白は余計に恥ずかしそうで。それが面白くもあり、オレはくすっと笑みをもらしていた。
「――そろそろ着くな」
手を握りホームに出れば、さすがにここからは恥ずかしいと真白に言われる。もう少しくっつきたかったが、見られるとヤバいか。仕方なく手を離せば、真白はオレの隣を少し離れて歩いていた。
「――お、来た来た」
お~い、と手を振る隼人。隣には既に藤原も居て、オレたちは四人でスーパーに入った。
こー見えて、隼人もそれなりに料理は出来る。一人暮らしが長いのもあるが、菓子なんかも作れる程だ。
「お前ら、今日はどこに行ってたんだ?」
「オレの運転で海沿いの神社にね。その後はカラオケだよ。志貴たちも神社に行ったんでしょ?」
「あぁ。オレたちは昼を食ってからだけどな。――真白、それオレが出すから」
「さ、さすがにそれはっ」
「普段の昼飯代も兼ねてだ。ほら、今日は素直に奢られておけ」
そう言って、真白の買い物かごをレジに通す。
真白は頭を下げてお礼を言っていたが、いつも昼をご馳走になってるんだから、これぐらいは当然だと思う。本当なら手を繋いで帰りたいところだが、今は、真白の後ろを歩くぐらいがいいだろう。真白と藤原が前、オレと隼人が後ろから歩き、オレたちはそれぞれの寮へ戻った。
◇◆◇◆◇
次の日。私は学校の下駄箱で立ち尽くしていた。その理由は、下駄箱に入れられた手紙。
「おっ、これはラブレターってやつじゃない?」
紫乃ちゃんが顔を覗かせる。
高校になってそんな手紙をもらうのは初めてで、私はとりあえず、中身を確認することにした。
【お昼休み、屋上で待っています】
そう書かれた手紙には、名前も書いていなくて。あまりにそっけない文章に、私はこれがラブレターのように思えなかった。
「屋上で直接告白でもしたいのかしら? で、真白はどーするの?」
「もし、これが告白なら、一応は聞かなくちゃって思うかな。ってか、紫乃ちゃんだってそれ」
紫乃ちゃんの下駄箱にも、手紙が入っていた。でも、紫乃ちゃんは無視を決め込むらしい。
「理科室に来てほしいだなんて、怪しさ満点だもの。何かあったりしたら、隼人先輩が止まらないだろうし」
「そう言えば――結局、ちゃんと付き合ったの?」
戸惑いを見せる紫乃ちゃん。それを見て、さすがの私でも二人が付き合ったんだなってことは理解出来た。
「ま、まぁね。一応、昨日からよ」
「そうなんだ! よかったね。いい人と一緒になれて」
「あ、ありがとう。でも、ちょっと心配なとこもあるのよね」
心配なとこ? 賀来先輩にそんな要素あったかなぁ。
「とにかく、隼人先輩が動いたら止まらないから、この手の話にはのらないわ。真白は結局行くの? 行くなら念の為、ドアの前で待ってようか?」
「そうだね。出来るなら一緒に居てくれると心強いかも」
「じゃあ決まりね。お昼は少し遅れるって連絡しとく」
それからは教室に行って、普通に授業を受けた。
今日も、机にゴミは入れられてない。本当、紫乃ちゃんと居る時に何もしてこないだなんて、厳禁にも程がある。それだけ私が舐められてるってことなんだろうけど。紫乃ちゃんに頼らず過ごせるのが一番いいけど、今のところ打開策がないんだよね。
――そしてお昼休み。
私と紫乃ちゃんは、屋上へと向かっていた。この後、生徒会室に行くからお弁当も持参して。
「それじゃあ、行って来るね」
紫乃ちゃんにお弁当を持ってもらい、ドアの前で待機しててもらう。
ドアを開ければ、そこに人は見当たらなくて。きょろきょろ周りを見渡すと、
「来てくれてうれしいわ」
と、背後から声が聞こえた。