Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。



「真白――好きだ」



 そう告げて、オレは一気に唇を奪った。最初から舌を絡ませる深いキス。今度は胸を触っているからか、真白の息遣いが最初から激しい。それに、舌を絡めてくるのが積極的で。それがうれしくて、オレはつい、悪戯をしたくなった。
 今まで胸全体を揉んでいたが、今度は胸の先を軽くつまんでみれば、

「んんっ!……そ、れふわっ」

 あきらかに反応する姿に、オレは高揚した。

「ん? これがどーした?」

 唇を離し、もう一度、胸の先をつまめば、真白は声をもらした。

「んぁっ。か、体が変で……なんだかっ。もどかしい」

「それは、感じてるって証拠だ。――これ以上は、また今度な?」

 そう言って、最後にキスをした。
 さすがに昼が終わりそうだし、これ以上をここでやるわけにはいない。何より、オレは真白を大切にしたいから。このまま続けたいと思う欲望に、なんとか理性をねじ込ませた。
 たくし上げられた服を元に戻し、真白を起こす。まだ少し呆けていたが、ブレザーはなんとか羽織れたようだ。

「ち、力が抜けてて……」

 うまくボタンが留めれないと言う真白に代わり、オレがボタンとネクタイを留めてやった。

「本当、今日はやけに積極的だったな?」

「だ、だって……和泉さんに、負けたくないから」

 どうやら、オレとアイツがやったことがあるのが、真白的に嫌だったらしい。そんなカワイイこと言われたら、今度はこっちから襲いたくなるだろうが。

「勝ち負けとか考えるな。オレたちはオレたちのペースでいいし、今の彼女は真白なんだから」

 そう言って頭を撫でれば、真白はうれしそうに笑ってくれた。

 ◇◆◇◆◇

 先輩とちょっと進展した午後のこと。
 五限の授業が体育なのもあり、私は急いでお昼を食べ、紫乃ちゃんと教室に戻っていた。
 いよいよ体育祭が来週に迫る中、練習は佳境と言った感じ。全体練習では先生の激が相変わらず飛んでいて、それに疲弊しながらも、みんな練習を頑張っていた。

「さすがに暑いわね。――真白、無理しちゃダメよ?」

 五分休憩に入ると、紫乃ちゃんが私の体調を気にしてくれた。

「だ、大丈夫! ちょっと、疲れてるだけだから」

 先輩に胸を触らせたせいか、いやに体は敏感になっていて。今思い出してみると、我ながら大胆なことをしたなって思う。

「顔、赤いわよ? 本当に無理してない?」

「こ、これはその……会室でのことを、思い出しただけで」

「なーんだ。心配して損した。ま、アイツと上手くいってるならいいけどね」

「うん。先輩、ちゃんとやさしいから大丈夫だよ」

「ならよかった。ってか、これでアイツと真白が結婚したら、晴れて親戚になるわね」

 面白そうだと言い、紫乃ちゃんは笑っていた。

「そ、そんなのまだ先のことだよ」

「お。否定しないってことは、結婚してもいいと思ってる証拠ね!」

 アイツも幸せ者ねぇ~、と言う紫乃ちゃんに、私はどう反応していいか困っていた。
 そ、そりゃあいつかは、結婚までいければ素敵だなぁって思うけど。さすがにそれはまだ早いと思う。

「結婚よりも先に、まずは就職だと思うけど」

「現実的なこと言うわねぇ。――あ、そろそろ集合みたい」

 言われて、私たちはクラスの輪に戻った。その後も全体での動きをやり、最後はトラックを全力で一周となり、私はなんとかクラスで中間ぐらいの順位でやり切った。
 紫乃ちゃんはと言えば、さすがはクラス対抗のリレーに選ばれるだけのことはあって、順位も上の方。紫乃ちゃんも先輩みたいにスペック高いから、実は男子よりも女子人気があったりするんだよね。イメージとしてはあれだ。宝塚っぽいイメージに近いと思う。

「あ、相変わらず早いね、紫乃ちゃんは」

「それでも十番目なのは悔しいわ。もう少しで抜けたのに」

 いやいや。クラスで十番目ってだけでも充分だと思うけど。
 今日はもう、この後は掃除をして帰るだけ。クラスに戻り着替えを済ませると、紫乃ちゃんは教室、私はトイレへと掃除をしに向かった。

「ねぇねぇ、望月さん」

 流しを掃除していると、同じくトイレ掃除のクラスメイトから声をかけられた。

「藤原さんって、彼氏が出来たって本当?」

「えっと。私からはなんとも」

「隠さないでよ。相手は三年の賀来先輩だってもっぱらの噂だから、望月さんなら知ってるかなぁって」

 も、もう噂が回ってるんだ……。これだと、私のことももしかして。

「ごめんね。そういうのは本人の許可がないと」

「えぇ~望月さんだけ知っててズルいよぉ」

「どうしてもって言うなら、後から紫乃ちゃんに聞いてみるから」

「いや、そこまではしなくていいと言うか。藤原さん、高身長で頭もいいでしょ? そんな人の相手なんて気になるなぁって、興味本位だからさ」

 あ、なるほど。この様子だと、紫乃ちゃんのファンって感じか。
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