Love Box:)
『…さ、桜です』
「…知ってる、よ?」
ノイズ混じりに右耳に入り込んだ音は、予想外に莫大な影響力を持って私の心を震わせた。
(…右耳が、くすぐったい)
『き、緊張、します』
「…だろうね」
(……あ、)
携帯電話の向こう側は至極落ち着いていて、その声に波動は感じられない。
「だって、凄く声、震えてる」
(…ほら)
私だけ。私だけがこんなに揺れている。
ぎゅ、と携帯を掴む右手に力を込めた。
落ち着け、私。
そう言い聞かせるように。