Love Box:)
『なん、で…?』
「桜、香。キミの名前だってずっと知ってたよ」
『でも、みちるは…みちるさんは…?』
そう問えば再びギュ、と苦しいくらいに強く抱き締められる。
井上さんの匂いで、いっぱいだ。
『――俺がこの5年、ずっと好きなのは、香だけだよ』
もう、嫌だ、こんなの。
なに、これ。もう…
(…嬉、しい、じゃないですか)
「私もずっと、先輩が好きです」
『俺も、香が、好きだ』
――その瞬間に、さっきまで哀しかった筈のオレンジ色は、心にそっと灯った暖かな小さな熱となり、私の目に優しく映った。
彼が傍にいる、それだけで目に見える景色はこんなにも違うのだと、改めて実感する私は…
今、幸せだ。
束の間のそれかもしれない。次の瞬間には夢だったと分かるかも知れない。
けれど、少なくとも今は、幸せなんだ…。