Love Box:)
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『あの後ろ姿が香だってわかるまで、随分探したよ…』
私の部屋に井上さんをあげて、二人でコーヒーを飲みながらソファーに座った。
『香の友達にも随分聞いて回った』
「…え、」
『横田が…』
そう言って井上さんは苦笑した。
ブランケットの持ち主を、実際は横田さん経由で私の知り合いに聞いていたらしい。
『俺は、恥ずかしくて…』
有り得ない。あの王子様な井上達矢が恥ずかしいなんてことがあるのだろうか。
学内ではいつ見てもポーカーフェイスでスカしていたのに。
『…ふふ、』
「笑うなよ、」
また、新たな一面を知った。
「でも香に好きな人がいる、って聞いてさ」
『え?』
「あぁ、俺が好きになるやつはみんな、手が届かないのな、って思ったよ」
また苦笑をこぼしながら、そっと私の髪を撫ぜる。
「でも、いつも何もしない臆病な俺を、横田が救ってくれたんだ」
(…あぁ、あれは偶然じゃなかったんだ)
逢うべくとして出逢った。
そんな気がしていたけれど、その裏には横田さんという一人の親友想いの優しさが隠れていたんだとわかる。
「でも久しぶりに逢ったら香、綺麗になってて」
『……、』
「ちょっと虐めたくなった」
コロコロ変わる態度の裏に、そんな想いがあったなんて、勿論私は知らない。