Love Box:)
『でも、お前が泣き出してあんなこと言って逃げるからさ、嬉しくて…』
「酷い、です」
『ごめんな、でも把握仕切れないのに嬉しくて、でも香は行っちゃって…』
「先輩、意外と不器用なんですね…」
そう言って仕返しとばかりクスリ、笑えば、彼は照れたように顔を背けた。
「煩いよ」
『ごめんなさい』
「…好き」
『好き、です』
幸せを確実に噛み締めながら、迷いなくそう答えれば、
唐突に強い力を頬に感じ、ぐるりと顔をそちらに向けられる。
「ムカつく、」
理不尽な言葉を浴びせられ、事態を把握する前に五感の伝達が理性に勝った。
『…ん、』
幸せな味は珈琲と甘い甘い、井上さんの唇。
ほろ苦さと幸せのテイストはどうしようもなくマッチして、数時間前の苦痛が嘘のように思える。
「好き、香、好き…」
角度を変えて交じわる度に漏れるお互いの吐息と、切なく紡がれる井上さんの愛の言葉。
私はただただ流れ落ちる涙でしか、それに応えられなかった。
この幸せが、ずっと続けばいいのに。
そんな甘ったれた願いを持つのも、今日は悪くないかな、と。
心地よい甘ったるさの中に溺れて快感に身を委ねては、井上さんを刻み込んだ。