Love Box:)
「なぁに、みちる」
彼はあたしの名前をよんで、呼吸を少し楽にしてくれた。
でも、それじゃだめなのよ。
『…息が、』
掠れる声で喉をかきむしるあたしを見ても、たっちゃんは取り乱したりしなかった。
ちょっと待ってなよ、そう言ってにっこり微笑むと部屋をあとにする。
はずされて、ベットにほうりだされたヘッドフォンからは錆びついた音が聴こえていて、静かにないていた。
彼に投げ捨てられたままの体勢で動けないでいる黒いそれは、それでもなお曲を流し続けている。
あたしはそいつが惨めで悲しかった。