Love Box:)
『たっちゃんはきっと、この色褪せた世界から外へ、出て行くべき人なのよ』
それでも胸の塊を一気に外へぶつけたようで、涙は流れ落ちるのにどこか爽快だった。
「俺は変わりたくないよ。みちるとずっと一緒に、みちるだけで…いいんだ」
『そんなの駄目よ。わかってるでしょう?あたしたちが良くたって、そんな世界は存在しえないの』
逆立ちしたってそんなこと無理だ。
もうすぐ高校を卒業して、たっちゃんは有名な大学に行って、それで大企業の跡取りになる。
あたしとは住む世界が違くなるのよ。
ふわふわ浮いた雲とか、ピンクの鳩とか、幸せなものでいっぱいのちっぽけな世界なんかズタズタに壊されちゃうんだから。
「でも俺は、みちると…。結婚だってみちるとしたいと思ってたし、それに…」
『なに言ってるの、たっちゃん。お父様はちゃんと結婚相手を決めてるでしょう?無理なのよ、もう子供じゃなくなるの。あたしたち』
自分に言い聞かせるように冷たく言い放った。
本当は、その手をとって、どこか遠くの異国の街にでも行ってしまいたい気分なのに。
そこでずっと、2人で幸せに暮らせたらどんなにいいかしら。