Love Box:)
もう、見れない?
「……はっ、」
あまりにも現実味がなくて苦笑が漏れる。いや自嘲か。
だって10年間一緒にいたんだ。毎日のように。
それが突然するりと手のひらをすり抜けていくなんて。
あまりにも。
(……や、ばいな)
思った以上に喪失は大きい。
いや、小さい。
小さくて大きい。
俺は今なにをどうしたらいいのか全く解らないで呆然としていた。
馬鹿みたいに無意識に頬を伝う涙は未だ止まっていなかった。
(…………)
静謐が苦しい。
この部屋にあるものを片っ端から粉々にしてやりたい。
この世界を、俺たちの世界を壊したやつらに怒鳴り散らしてやりたい。
違うんだ。
戻ってきて、みちる。
俺、たださびしいんだよ。
――もうたっちゃんはこんなに大きくて。あたしなんかよりこの世界を上手く生きているじゃない
ちがうんだよ。
――たっちゃんの世界は広がったのよ
ちがうんだって。俺はただ、
――だって、やめなくちゃならないのよ。きっとたっちゃんにあたしはもう必要ないの。長く伸びすぎた毛先とか、溜め込みすぎた脂肪とか、そんなのと同じなんだから
俺にはみちるが必要なんだよ。みちるしかいらない。
「……み、ちる」
俺はみちるが居なきゃ生きていけないような、本当は弱くて情けない男なんだ。