Love Box:)







あぁ、みちる。

最後に彼女が“たっちゃん”と俺の名前を呼んでくれたところで、涙腺は決壊した。



(…あぁぁ、あれから一度も泣かないって決めてたのにさ)



俺も愛してたよ。この世で一番。

そして生まれて初めて、あんなに人を愛したよ。

みちるがいなければ俺の人生はもっと空虚だったはずだ。

あんなにも人と人が愛し合えることを教えてくれたのは彼女だったから。

そうじゃなきゃきっと、そんなの架空の世界だっただろう。

ありもしない、ラブストーリーの世界だって。




「……ありがとう」


握りしめて角が少し歪んだ便箋に呟いた。

みちるが去ってから10年間、ずっと胸の奥のほうに押し込めていたわだかまりが、ものの数分でスーッと溶けていくのがわかった。

やっぱり君の威力はすごいよ。







だけど、俺がこの手紙に返事を書くことはもうないだろう。

みちるはこの世界で俺のたった一人だけれど、それは過去というパノラマの中の大切な思い出だ。

俺の今は、今この瞬間、現在であらなければならないと思うんだ。




だから




(…どうか、幸せに)










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