もしも雪なら
つまり
別の世界、天使が居る世界があって、その世界から天花が俺に配属されて来た。
そういう事なんだろう。
でも、なんで俺なんだ…?
金に困ってる訳じゃないし、生活に不満がある訳でもない。
そりゃ、彼女も居ないし、あっち方面では不自由はしてるし、好きな女のタイプも特にこだわりもないけど…
「ガクちゃ…重い」
「へ?…ぇ、あれ?え?」
ふと気付けば、俺は天花の後ろに周り込み、抱きしめるような形になっていた。
慌てて離れ、気まずくなってタバコを口にする。
ライターの火を着ける手が微かに震えてるのが分かった。
そんな様子に天花は小さく笑って
「あの時と一緒だね」
そう言った。
あの時?
やっと着いたライターの火がタバコの先で揺らめく。
そのままタバコに火を着け、少しだけ吸って深く吐いた。
薄白い煙りの向こうに、くりっとした天花の瞳が見えて、可愛いなと素直に思う。
同時に大事なことを忘れてる気がして…
俺はじっと天花を見つめる。
でも、天花は自分が言った事なんて忘れたみたいに、テレビを見たり、こっちを向いたりして笑っていた。