もしも雪なら
「なるほどな…」
お袋が変に笑いかけた理由が分かった。
ソファーの下、テーブルの隅、ゴミ箱の脇に丸まったティッシュ。
テーブルの上には女物と分かるピアス。
どう見ても、[した跡]です。本当に…以下省略。
「おい…」
「…んん」
「おい」
「ん…ぁ、おはよぉ」
「おはよ。…じゃなくて、お袋来た」
「ふーん…」
「おい」
別にやましい事なんか一つもない。
ないけど、親にしてみれば世の中に存在しない上に、未知な人物を目の当たりにしたら、平気な顔で居られるはずがないのは当然。
隠すのは子としての義務だ。
なのに、天花は起きてくれない。
一瞬だけ起きたが、今は俺の膝の上で気持ちよさそうに寝ている。
猫みたいに小さく丸まって。
まぁ、いっか。
ふっと鼻で笑い、天花の肩にそっと手を乗せる。
もう、整理するのは辞めた。
だいたい、全部を整理した所で、解明出来ない事なんか沢山あるし、
その時、起きた事を理解すればいい話しだ。
俺は天花の寝顔を眺めながら「可愛いな」と思う。
それと同時に、大事な何かを忘れてることを思い出し、少しだけ頭を痛めた。