もしも雪なら

例えば、いま俺が死んだら
天花も消えるんだろうか…



そんな事を考えてると、お袋が「やめなさいよ」と言いだした。


俺は「何が?」なんて応えたが、内心焦っていた。
親にも見透かされてる気がして…




「寄りかかるの止めなさい」


「あぁ…」



なんだ、そんな事か。とホッとしたのも束の間。

お袋がポツリと言う。



「そうやって寄りかかってると、ガクが離れられなくなるから、気をつけなさい」




俺が離れられなくなる?

馬鹿馬鹿しい。


離れないのは天花の方だろ。
もう何時間膝に座ってるか分かってんのか…?




「寝るわ」

そう言い残して自室に向かう。
「またゲーム?」と、お袋の声が聞こえたけど無視。

天花が後ろに着いて来たが、構わずに自室のドアを閉めた。


静まり返ったリビング。
フローリングの床を擦ったように、キュッと足音が響く。




「ガクちゃん」


「ん」


「うち、消えたほうがいい?」



ドアを一枚隔てた向こう側で、天花はどんな顔してるのか…



「そんなこと言ってないだろ」


「うん」


「寝る」


「おやすみ…」




想像は想像でしかなかく、何も思い描けなかった。
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