もしも雪なら
「ごめん…」
俺が謝る前に天花はそう呟く。
その声は震えていた。
「いや…俺のほうこそ、ごめんな。痛かったろ…」
天花の手をそっと取る。
その手は冷たく、少しだけ浅い爪痕が残っていた。
小さくて頼りない手を見ながら辿っていると、「ガクちゃん」と優しい声が呼ぶ。
天花を見ると、こっちへ来たそうな顔してるから、俺は迷わず「おいで」と言って膝に座らせた。
それから暫く二人してパソコンの画面をぼんやりと眺めていた。
時計の針の音、パソコンのファン、仮想世界から流れてくる音、どれもが耳障りで
天花の腰に回してた手を少し強め、身を寄せた。
とくん
とくん
規則正しく、まるでメトロノームみたいに鳴っている。
それは、天花が現実で生きてる証拠。
天使とか、人間とか、動物だとか、そんな物は関係ない。
生きてる事。に理由なんて要らないんだ。