もしも雪なら
過去

この日
俺は初めて、この目で天花が天使だと確認した。


建設途中のタワーの約300メートル辺り
完成すればフロアーの一部になる場所で、中休憩を取っていると

天花は鳥が飛んで来たように足場に降り立ち、蝶々みたいに優雅に大きな羽を背中で揺らす


その羽が段々と小さくなって消えようとした時





「…危ねぇな、おい。それでも天使かよ」




天花の身体が傾くのが見え、俺は咄嗟に身を乗り出し、その身体を掴んだ。





「てへっ」


「てへっ。じゃねぇし」




俺が離れようとしても、天花はしがみついたまま動こうともしない。




「天花?」


「はい…?」


「お前…高いとこキライだろ」


「うん…」




ここまで来ると呆れるよりも笑えてくる。

天使じゃなくて、堕天使じゃね?て激しくツッコミたい。

これはこれで可愛げあるけどな…




「ほら、ちゃんと掴まんな。下見んな」


「…ぅ」


「だぁいじょぶ。俺を信じろ」


「…」


「最悪、一緒に落ちてやるよ」





世話が焼ける女ほど可愛い。

頭の中で、そんな言葉が浮かんでいた。
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