もしも雪なら
「職長、雨降ってきそうです…け、ど…」
「ん。あ…」
俺はすっかり気が緩んでいて、職場と言う事を忘れていた。
後ろから声を掛けられ、はっとした時はもう遅く、
腕の中には未だ羽をひらひらさせた天花、それを抱きしめてる自分。
あぁ…
なんか、色んな意味で終わった気がする。
「職長」
「なに…?」
ごくんと喉が鳴った。
「その子、羽根がもつれてますよ」
「へ…」
「業務終了は自分が伝えとくんで、早く見てあげた方がいいですよ」
「あ…はい」
まさか、お袋以外にも知ってるヤツが居るなんて…
「ちょ…っと待った」
「何ですか?」
「見えんの?」
「何が…、あぁ、自分も前に着いてましたからね。
つか、だいたいの人が着いた事あるんじゃないですか」
嘘だろ?
マジかよ…
いつの間に世界は変わったんだろう…
ふと天花を見ると、頬を膨らませながら、焦れったそうに羽根に手を伸ばしていた。
やっぱり、その顔はハムスターに似ていて
俺はそんな天花をじっと見つめているしか出来なかった。