もしも雪なら
俺のせめてもの反抗は天花の羽根が頬に当たった反撃により、呆気なく散った。
「おい。結構痛かったぞ」
目の前ですぅーと消えて行く大きな羽根。
その背中が急に頼りなく見えた。
傷ついた?
そう思ってると、天花は振り返り、俺の頬に小さな手を当てる。
心臓が裏返ったような感じがした。
「綺麗な顔してるよ」
「それだけは褒められるからな」
どくん
「知ってるよ」
「そか」
どくん
「ガクちゃん」
「なに?」
「怖い?」
どくん―
「なに…が」
小さな手が頬をするりと滑り、俺の頭は胸の中へと埋まった。
そこは柔らかくて、温かくて、心音はメトロノームで
それが何故か目の辺りを熱くさせる。
でも
泣いたのは天花の方だった。
キスされたオデコに伝う一滴。
それっきり流れて来ないのは、手をいっそう強めたせい。
俺はそれを振り払う事は出来なかった。