もしも雪なら

別れてから半年。
当たり前だが、何の音沙汰もない。

生きてるのか、死んでるのか…


まさか
アイツに限ってそんな事ないな




深夜1時を回り、帰ると言う智を見送った後、エレベーターに乗りながら考え、変な事まで思い付いて何とも言えない気持ちになる。


部屋に入り、リビングに戻ると、天花はソファーでぐったりしていた。
よっぽど疲れたらしく、俺を見てもにこりともしない。

そのままソファーの脇に腰を下ろし、天花の髪をかきあげ、そっと撫でた。




「天花」


「なぁに…?」


「お前、千梛だろ」





なんで今まで気付かなかったんだろ…


直ぐふてくされるとこも

その後で笑うとこも

膝に乗りたがるとこも

小指が短いとこも

その髪や小さい手や身体も

ハムスターに激似なとこも



全部

俺が捨ててしまった記憶だったんだな…





「違う…と思う…」


「そか…」


「そうだったら良かった?」



「お前はお前だろ。でも…」


「…でも?」


「なんでもない。ほら、寝るぞ」






俺はずっと独りよがりだったんだ。
< 29 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop