もしも雪なら
別れてから半年。
当たり前だが、何の音沙汰もない。
生きてるのか、死んでるのか…
まさか
アイツに限ってそんな事ないな
深夜1時を回り、帰ると言う智を見送った後、エレベーターに乗りながら考え、変な事まで思い付いて何とも言えない気持ちになる。
部屋に入り、リビングに戻ると、天花はソファーでぐったりしていた。
よっぽど疲れたらしく、俺を見てもにこりともしない。
そのままソファーの脇に腰を下ろし、天花の髪をかきあげ、そっと撫でた。
「天花」
「なぁに…?」
「お前、千梛だろ」
なんで今まで気付かなかったんだろ…
直ぐふてくされるとこも
その後で笑うとこも
膝に乗りたがるとこも
小指が短いとこも
その髪や小さい手や身体も
ハムスターに激似なとこも
全部
俺が捨ててしまった記憶だったんだな…
「違う…と思う…」
「そか…」
「そうだったら良かった?」
「お前はお前だろ。でも…」
「…でも?」
「なんでもない。ほら、寝るぞ」
俺はずっと独りよがりだったんだ。