もしも雪なら

酔っ払ったか?
たった一本でないだろ。

そんな事を思いながら部屋に入ると、見たことのない女がコタツの前に、ちょこんと座り込んで居た。

俺が「誰?」と尋ねる間もなく、その女はビールを手にして口にし、直ぐにこっちを向く。

涙目にへの字口、頬も少し膨らんでいて、見た目がもろハムスター。


人んちのビールがそんなに美味いか。そうか。


なんて余裕があるはずもなく…





「待て!飲め!飲み込めっ」


状況から判断して、女が飲めもしない酒に戸惑っているのが分かった。

それを証拠に女は俺の言葉に力強く頷き、意を決して


吐いた。



「お前…」


「無理」


「だからって吐くなよ…。あーぁ、もう。洗うからどいて」




俺は女が誰なのか、何者なのか、聞くのも忘れ、起こった状況を淡々と処理して行く事で手一杯だった。

丸いコタツのテーブルを床に傷つけないように置き、コタツ布団を剥がし、再びテーブルを戻す。


ただのテーブルになったのを広いソァーで座りながら、女はじっと眺めていた。


なんか言えばいいのに。とも思ったが、こんな状況では話しにならないのは自分でも分かっている。
< 3 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop