もしも雪なら

来るワケないよな…



3月半ばだと言うのに街には雪が残り、空からも雪が降り注いでいた。

夕方も迫り、人も増え、色とりどりの傘が開き、目の前を行き交う。



駅前、人混みの中、頭だけ覗いてる自分が目にしたのは





「千梛…?」




初めて見るのに、一目で分かった。

小さい背丈、白い傘に白いダッフルコートが人混みをすり抜けながら、何かを探すように歩いてくる。


そして

あと数歩と言う所で足を止めた。




目が合ったまま立ち止まる二人。
まるでドラマみたいに、周りの音が消えて、千梛の荒い息だけが何度も白く宙に浮かんでいた。





「来ると思った」




嘘言うなよ…

そんな自信なかったクセに。




「寒いし、どっか入るか。な」





本当は諦めてた。
今日の夜にでも帰ろう。そう思い始めていた。

別れた時のメールを考えたら、千梛にも同じ気分をさせたんだから当然だと思った。

消えるのが先決だと…



でも、あんなメールで来てくれて嬉しかった。

初めて見る千梛は写メで見るより、だいぶ痩せてたけど…
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