もしも雪なら
ホテルの7階にあるラウンジ、向かい合わせで座り、お互い何も話せずに夜景を見下ろしていた。
大通りに飾られたイルミネーションがキラキラして、雪が舞っていて
こんな場所と雰囲気の中で、俺達は初々しい恋人に映ってる事だろう…
「お前、痩せたな。前のままで十分なのに」
改めて目にした千梛はとても小さく、痩せてはいたが、想像してた通りで
違っていたのは
「腹は?」
何を聞いても
「すごいな、雪」
何を話しても
「お前……なんで声出なくなってんだよ」
首を振るか、笑うか、そのどっちかだった。
喉の奥が熱くなって、思わず頬杖ついたフリで隠す。
その手は小刻みに震えだしていた。
「バカだろ…」
自分に言い聞かせるようなセリフが胸に留まって、今までの色んな物が積み重なって苦しくなった。
付き合うと決めた時、こうやって会えば良かった。
そう、初めて後悔した。
窓の外で雪の粒が大きさを増し、降り続く。
そんなムードも、どんな素敵なシチュエーションも、今の2人にとってはただの背景。