もしも雪なら
だけど
仕返しなんてなくて
千梛は一生懸命に言葉を紡ぎだす。
『ガクちゃんのこと好きだよ。…多分これからも…』
動かす手を引き寄せ、直ぐにでも抱きしめたいのに…
2人の間にあるテーブルがとても広く感じる。
『でも、…どうにもならない』
その言葉が余りに大きすぎて
それは
自分が見過ごして来た時間の重みなんだ、とようやく分かった。
そう気付いた時、俺は千梛に何て言うべきか、何がしてあげられるのか、を探していた。
なのに、俺は一番言ってはいけないことを口にした。
「俺も好きだよ」
目の前で千梛が固まる。
その顔は何とも言えない表情をしていた。
取り返しのつかない言葉がぽっかりと穴を開けたみたいに、2人の合間に隙間を作り出す。
それを修復出来る術なんて
もう、俺にはない。
黙り込んでいた千梛がテーブルを叩き、時計を指して言う
『帰らなきゃ』
「送ってく」
なんにも出来ないけど
せめて今日だけでも
嫌な思い出にはしたくない。