もしも雪なら

「千梛」


『なに?』


「今まで…ごめんな」





地下鉄を待つ間、千梛はベンチに座り、俺はその横で柱にもたれながら、目線が同じ位置になるように腰を下ろす。

すると、千梛は俺の方へ向き直し、にっこりと笑って首を振った。



『会いに来て良かったよ。会えて嬉しいもん』



「俺もだし」


『帰り、気をつけてね』


「子供じゃねぇし」


『いっつも風邪ひいて、すぐ熱出るクセに』


「時々だろ」





昔のようなやり取りに笑い合う2人

こんなに気が合うのに、それだけで十分だったはずなのに…




『ガクちゃん変わんないね』


「お前は…なんか優しくなったな。前からだけど」





俺は変わる事を求めて捨てたのに…





「千梛」


『…』





「…いった」





ダメだって分かってても、その顔を見たら止めるなんて無理だった。

千梛の『なぁに?』って言うクセ
その口に唇を重ねた。


長い口づけのあと、千梛は俺のオデコにデコピンをして


『バカ』

そう言って頬を膨らませた。



「ハムスターめ」
なんて、からかってたら電車が滑り込んできて…
< 36 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop