もしも雪なら
「千梛」
『なに?』
「今まで…ごめんな」
地下鉄を待つ間、千梛はベンチに座り、俺はその横で柱にもたれながら、目線が同じ位置になるように腰を下ろす。
すると、千梛は俺の方へ向き直し、にっこりと笑って首を振った。
『会いに来て良かったよ。会えて嬉しいもん』
「俺もだし」
『帰り、気をつけてね』
「子供じゃねぇし」
『いっつも風邪ひいて、すぐ熱出るクセに』
「時々だろ」
昔のようなやり取りに笑い合う2人
こんなに気が合うのに、それだけで十分だったはずなのに…
『ガクちゃん変わんないね』
「お前は…なんか優しくなったな。前からだけど」
俺は変わる事を求めて捨てたのに…
「千梛」
『…』
「…いった」
ダメだって分かってても、その顔を見たら止めるなんて無理だった。
千梛の『なぁに?』って言うクセ
その口に唇を重ねた。
長い口づけのあと、千梛は俺のオデコにデコピンをして
『バカ』
そう言って頬を膨らませた。
「ハムスターめ」
なんて、からかってたら電車が滑り込んできて…