もしも雪なら
何も言わず、千梛は右手を差し出す。
応える俺の左手をぎゅうっと掴む。
手をゆっくりと離して、そのまま電車に乗り込んで行く。
コートに着いたフードのファーが羽根のようにフワフワしていた。
小さな後ろ姿が泣いてるような気がして、引き止めようかと思った時
電車のドアが閉まり、千梛が振り向く。
その顔が笑ってるから、切なくなって自分が泣きそうになる。
なのに、千梛は平気そうな顔しながら、窓に息を掛けて
ダイスキ
そんなこと書いて
手を振るように消して
バイバイ
そう言って
唇噛んだまま
下手な笑い顔が消えて行った…
ふざけんなし…
またね。だろ
アホか…
自分が言えば良かっただろ
何してんだよ…