もしも雪なら
手を元に戻し、今度は視線を背中へと向けて見てみる。
丸みを帯びた小さな背中には、緩やかなカーブしかなく、羽が生えたような痕跡さえない。
「軽っ」
今日起きた事は現実だし真実だ。
でも、それを整理するには頭の回転が必要だ。
時間は既に4時になろうとしている。
俺は天花を抱え、客室のベッドに寝かせてから自室に入った。
布団の中へ潜り込んで、思う事はただひとつ。
夢なら早く覚めてくれ。
「おはよー」
「おはよ…」
願って叶う現実。
それこそ非科学的な事なんだろう。
自室から出ると、既に天花は起きていて、テレビのアニメを見ていた。
「子供かよ…」
そう呟き、やるべき事を淡々と済ましていく。
顔を洗い、顎ヒゲを整え、少し伸びた髪の毛をまとめ、眉毛の手入れをして歯を磨く。
そしてリビングに行き、タバコを吸いながらテレビを見る。
それが朝の流れだった。
が、今日は先客の天花がテレビを独り占め。
俺は仕方なく、少し間を空けて隣に腰を下ろし、テレビを見た。
横目で天花の背中を見ながら…