もしも雪なら

朝陽に照らされた産毛が輪郭を縁取り、 その横顔に柔らかいカーブを描いた頬はまるで幼い子供のようにも見える。

眉毛は手入れしているようだが、今時にしてはしっかりとした形だし、唇も小さいけれど、それはそれで可愛さがある。


横目でチラチラと見て居ると、天花と目が合う。
天花がにっと笑ってくるから、思わず笑って見せる。
が、明らかに引きつっていた。

そして、直ぐに天花はテレビへ向き直って言う。




「生えて来ないよ」


「へ?」



気付いてたのかよ
なんだ?俺の視線感じながら、心ん中で「こいつ、羽生えてないか確かめてる」とか思われてたのか…

自分が見透かされたようで恥ずかしくて、視線が定まらずに浮つく。





「どんだけ見ても生えないよ」

そう言って天花は俺に向かって笑った。



「なんで?」と素直な質問をすると、天花はまた笑い

「仕方ないなぁ」とでも言うような溜め息を吐いて話し始めた。



「羽はね、飛びたいって言う気持ちとか、そこへ行きたいって思う気持ちとかからくるの。

だから、見られても生えないし、出して見せてとか言われても生えないの。分かる?」
< 8 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop