もしも雪なら
朝陽に照らされた産毛が輪郭を縁取り、 その横顔に柔らかいカーブを描いた頬はまるで幼い子供のようにも見える。
眉毛は手入れしているようだが、今時にしてはしっかりとした形だし、唇も小さいけれど、それはそれで可愛さがある。
横目でチラチラと見て居ると、天花と目が合う。
天花がにっと笑ってくるから、思わず笑って見せる。
が、明らかに引きつっていた。
そして、直ぐに天花はテレビへ向き直って言う。
「生えて来ないよ」
「へ?」
気付いてたのかよ
なんだ?俺の視線感じながら、心ん中で「こいつ、羽生えてないか確かめてる」とか思われてたのか…
自分が見透かされたようで恥ずかしくて、視線が定まらずに浮つく。
「どんだけ見ても生えないよ」
そう言って天花は俺に向かって笑った。
「なんで?」と素直な質問をすると、天花はまた笑い
「仕方ないなぁ」とでも言うような溜め息を吐いて話し始めた。
「羽はね、飛びたいって言う気持ちとか、そこへ行きたいって思う気持ちとかからくるの。
だから、見られても生えないし、出して見せてとか言われても生えないの。分かる?」