塀の上の蝶
ベッドに沈み込むような気だるい身体を感じながら、重くなり始めたまぶたをわずかに開いた。
壁紙が所々剥がれた薄暗い部屋が、明美の遠退く意識の中に深くそして消えない残像を残してゆく。

「あぁ、どうしてまた…。」

ため息とも独り言ともとれる呟きは、困惑ではなく、むしろ安堵のような響きを部屋に残した。
どことなくかび臭く、そして繁殖期を迎えた動物のような匂いのこもる部屋の中に。
それは薄明かりに白く浮かび上がる、均整のとれた明美の身体とはあまりに掛け離れたものだった。

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