塀の上の蝶
昼の顔
「おはよう、白井くん。毎日朝早くからご苦労さん。」

「おはようございます。重田社長。今朝は30分後に役員会の打ち合わせがありますが、すぐにブリーフィングを始めますか?それとも先にお好きな珈琲を召し上がられますか?」

「白井くんの爽やかな笑顔と凛とした姿を見ると、今日も頑張らなきゃとこちらが励まされるよ。」

「ありがとうございます。秘書としての勤めを果たしているまで。重田社長からそのような言葉を頂けるなど光栄でございます。」

「は、は、白井くんは相変わらず隙がない。君の心の内を覗き込める人はいるのかね。まぁ、これ以上は聞かんが。とりあえず珈琲をもらおうか。」

日本トップの業績を誇る丸井商事で秘書部部長を務める白井啓子。
社内でも異例の速さで部長の座に就いた。
それもこの社が嫌う転職組みにもかかわらず。
その立ち居振る舞いは非の打ち所がなく、モデルとも間違われるほどの端正な顔立ちには、どことなく人を近寄らせない雰囲気が漂う。
白井の醸し出す雰囲気と実力による出世は、妬みの渦と化す女性社員の口から「お局様」という言葉も「負け犬」という言葉をも奪う。


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