塀の上の蝶
白井が羨望の眼差しで見られるのは、何もこれだけではない。
どの上司からも取引先からも評判がよく、休みの日には積極的にボランティア活動をし、誰の目から見ても全く非の打ち所がない人間だからだ。
「おっはようございまーす!」
田端恵子のお出ましだ。
始業1分前にもかかわらず、慌てる様子を微塵も見せない田端。
最近の新人は空気が読めないのか、いや、実はアラフォー世代より肝が据わっているのか。
彼女の存在に白井はイラッときながらも、どことなく自由奔放さに魅力を感じる自分にハッとし、珈琲を注ごうとする手を止めた。
「彼女なんて瞳を覗き込めば、いや、離れていたって考えていることはお見通しの薄っぺらい女よ。若さという武器はあっても、男心を惹きつけることは到底彼女には出来ないわ。」
そう心の中で呟きながらも、何も知らない純粋無垢だった頃の自分をふと思い出す。
「そう、なんだって負けず嫌いで興味津々の私は、いろいろな世界を覗きすぎたわ。そんなことをしなければ今頃は同級生のように可愛い奥様として家でお料理をしたり、女性同士で楽しくお茶をしたりしていたかもしれない。」
一瞬そんな思いが頭をよぎるが、煎れたて珈琲の香りが白井を現実に連れ戻す。
どの上司からも取引先からも評判がよく、休みの日には積極的にボランティア活動をし、誰の目から見ても全く非の打ち所がない人間だからだ。
「おっはようございまーす!」
田端恵子のお出ましだ。
始業1分前にもかかわらず、慌てる様子を微塵も見せない田端。
最近の新人は空気が読めないのか、いや、実はアラフォー世代より肝が据わっているのか。
彼女の存在に白井はイラッときながらも、どことなく自由奔放さに魅力を感じる自分にハッとし、珈琲を注ごうとする手を止めた。
「彼女なんて瞳を覗き込めば、いや、離れていたって考えていることはお見通しの薄っぺらい女よ。若さという武器はあっても、男心を惹きつけることは到底彼女には出来ないわ。」
そう心の中で呟きながらも、何も知らない純粋無垢だった頃の自分をふと思い出す。
「そう、なんだって負けず嫌いで興味津々の私は、いろいろな世界を覗きすぎたわ。そんなことをしなければ今頃は同級生のように可愛い奥様として家でお料理をしたり、女性同士で楽しくお茶をしたりしていたかもしれない。」
一瞬そんな思いが頭をよぎるが、煎れたて珈琲の香りが白井を現実に連れ戻す。