イマージョン
「どーした?ぼーっとして」
窓から見える激しい雨に見とれて頭の中で、あの頃の様に"Rain"がまた流れ出し、気付けば、そちらに集中していた。
「ごめんごめん。凄い雨だなーって思って」
山川が煙草をくわえ口を動かし火を点けてくれと合図をする。他人の煙草に火を点けるなんて屈辱的な行為だと思うが大分慣れた。
「ほんと、すげー雨だな」
窓を見るフリをして私の肩に手を回す。触るな。肩が露わになっているドレスだから山川の湿っぽい手が直に触れる。殺すんだ。感情を殺すんだ。笑いの機能だけ使えば良いんだ。
「こんな天気なのに来てくれてありがとね」
「なーに言ってんだよ。美優が来てる日には、いつも来てんだろ」
来てんだろ。じゃねぇよ。濡れたグラスをハンドタオルで拭きながら、そうだね。ありがと。と返す。
「今日、友達の結婚式があってね、雨の中大変だなーって思って」
舞は例の彼氏と結婚をした。もちろん招待されたけれど断った。舞の友達なんて知らない人達で窮屈で耐えられない。仕事を口実にし、おめでとうとメールをしただけだ。それに、ドレスなんて、この店で着るキャバクラ仕様のド派手なドレスしか持っていないから場違いだ。店で客の相手をし、触られるのは苛つくけれど、1人につき数時間耐えれば良いし、笑顔のスイッチを入れれば良い。客という"駒"だから好きと言う感情も生まれない。だから私は、この仕事を選んだ。給料も良い。
「へー、そうなんだ。なに、美優は結婚しないの?」
「しないよ。相手がいないもん」
くすっと女らしく笑う自分が気持ち悪いと思いながら笑う。これがキャバクラだ。
「なんだよー。俺が居るじゃん」
山川は酒臭い口でそう言うと私の腰に手を回し身体を引き寄せた。私も多少酔っているが素面だったら、こいつをぶん殴っているかもしれない。だから何時も体内に酒を入れ意識レベルを低くする。
窓から見える激しい雨に見とれて頭の中で、あの頃の様に"Rain"がまた流れ出し、気付けば、そちらに集中していた。
「ごめんごめん。凄い雨だなーって思って」
山川が煙草をくわえ口を動かし火を点けてくれと合図をする。他人の煙草に火を点けるなんて屈辱的な行為だと思うが大分慣れた。
「ほんと、すげー雨だな」
窓を見るフリをして私の肩に手を回す。触るな。肩が露わになっているドレスだから山川の湿っぽい手が直に触れる。殺すんだ。感情を殺すんだ。笑いの機能だけ使えば良いんだ。
「こんな天気なのに来てくれてありがとね」
「なーに言ってんだよ。美優が来てる日には、いつも来てんだろ」
来てんだろ。じゃねぇよ。濡れたグラスをハンドタオルで拭きながら、そうだね。ありがと。と返す。
「今日、友達の結婚式があってね、雨の中大変だなーって思って」
舞は例の彼氏と結婚をした。もちろん招待されたけれど断った。舞の友達なんて知らない人達で窮屈で耐えられない。仕事を口実にし、おめでとうとメールをしただけだ。それに、ドレスなんて、この店で着るキャバクラ仕様のド派手なドレスしか持っていないから場違いだ。店で客の相手をし、触られるのは苛つくけれど、1人につき数時間耐えれば良いし、笑顔のスイッチを入れれば良い。客という"駒"だから好きと言う感情も生まれない。だから私は、この仕事を選んだ。給料も良い。
「へー、そうなんだ。なに、美優は結婚しないの?」
「しないよ。相手がいないもん」
くすっと女らしく笑う自分が気持ち悪いと思いながら笑う。これがキャバクラだ。
「なんだよー。俺が居るじゃん」
山川は酒臭い口でそう言うと私の腰に手を回し身体を引き寄せた。私も多少酔っているが素面だったら、こいつをぶん殴っているかもしれない。だから何時も体内に酒を入れ意識レベルを低くする。