イマージョン
量が少なくて油ぽく、キャベツの芯ばかりで麺が少ない焼きそばを、おいしい~。と黄色い声で食べる。これで600円って…。まぁいい。私が払うんじゃないし。
「なぁ…」
「なぁに?」
「アフターしねぇ?」
「カラオケ?」
「う~ん…」
唸りながら私の太ももにいやらしく触る。こら。と手を優しく払い退ける。あぁそう言う事ね。想像したら、食べた焼きそばの油ぽさで吐き気が込み上げて来る。ちょっとごめんね。そう言って私はトイレに行って吐いた。酒と、焼きそばが混ざっている。気持ちが良い。左手の指輪を外して指を突っ込んで更に吐き出す。私はアンドロイドだから食べ物など食べてはいけないのだ。指を突っ込み過ぎて親指以外のネイルが少し剥がれた。そう言えば最近、吐き蛸が出来た。吐く事が快感で仕方がない。利き手では無い左手を使うのは、よく使う右手に皆注目をするからだ。10代の頃に、あんなに食べ物に執着をしていた自分は何処へ行ったのだろう。そうだ、あの時はまだ覚醒していなかったのだ。アンドロイドでは無かったのだ。今では懐かしい思い出。思い出と共に渦を巻いて流れるトイレの水を見て微笑む。胃が空っぽになった。液体は許せても個体を体内に入れるのは許してはいけない。食べ物と言う個体を入れると身体が重くなり、集中力が無くなり美優を演じるにあたりミスが生じる恐れがある。そして眠くなるし、人間臭くなる。排泄も液体だけで良い。新しい液体を入れて出す、チャージで良い。
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