ｲﾏｰｼﾞｮﾝ

銀色のｽｶﾙが描かれている黒いｼｬﾂを色あせを防ぐ為に裏返しにして、洗濯ﾈｯﾄに入れ、ｶｺﾞに放り込みﾀﾞﾒｰｼﾞﾃﾞﾆﾑを脱ぐ。本当は洗濯は母親の仕事。私の私服は黒い服にﾃﾞﾆﾑだ。ｷｬﾊﾞｸﾗの様な阿呆みたいな格好はしない。露出などしたくない。ﾘｽﾄｶｯﾄの痕が見える時は、ﾘｽﾄﾊﾞﾝﾄﾞかﾌﾞﾚｽﾚｯﾄで誤魔化す。いつもﾃﾞﾆﾑを脱ぐ時に憂鬱を感じる。骨盤が浮き出て、擦れて痛みが走るから。赤くなっている。ﾘｽﾄｶｯﾄは痛みを感じ無いのに何故だろう。怒りやｽﾄﾚｽのぶつけ所がなくて私は自傷する様になった。他人に心を開いてはいけない。思った事を口にするのを極力避ける。私はｱﾝﾄﾞﾛｲﾄﾞだから。けれど自分の部屋では少し人間になれる。暑苦しい服を脱ぎ、仮面を取りに風呂に入る。口紅は既に取れている。毎日の怒りを洗い流し、素に近い美夢に戻る。ﾄｲﾚに行き、ｶﾗｵｹで無理やり食べたﾎﾟﾃﾄ盛り合わせをと酒を吐き出す。また赤いﾈｲﾙが剥げた。こんな調子だからﾈｲﾙは3日に１度のﾍﾟｰｽ位で塗り直すしている。歯を念入りに2度磨き、10回うがいをして、ﾏｳｽｳｫｯｼｭを5回する。多田にｶﾗｵｹﾎﾞｯｸｽでｷｽされた事を思い出し、また吐き気が込み上げて来たが、もう何も出ない。吐いたとしても血が出るだけだろう。多田の考えている事は分かっていたけれど、最近ｱﾌﾀｰをしていなかったし仕方がなかった。ｱﾌﾀｰなんて同伴と違い、金にならないけれど次に繋げる為には、どうしてもやらなければいけない。