イマージョン
あの日以来、私が何度となく、いくら浅倉さんにメールをしても返事は来なかった。〈逢いたい〉〈どうして返事くれないの?〉〈何か悪い事した?〉〈チィは元気?〉聖に夢中になっていた頃に逆もどりしたみたいに、自分の存在を知らしめたかった。たまらず西村さんにメールもしたけれど、〈何でそんな事、俺に聞くん?〉冷たい返事しか返って来なかった。私が西村さんに興味が無いのを、あからさまにしていたせいなのか。分からない。もう何も分からない。舞にもメールをした。〈連絡が取れなくてどうしていいか分からないよ。おかしくなっちゃいそう〉舞は、〈私から連絡する様にメールしてみるよ。〉と、優しい返事が来た。ほっとした。少し、おかしくならずに済む感じがした。皆で逢った時に舞に浅倉さんの気持ちを伝えておいて良かった。でなければ、こんな情けない事言えなかったし、長い付き合いだから言えたのだと思う。
布団にくるまって光を遮り絶望を感じていて手に携帯がくっ付いているみたいに携帯を握りしめいたら、すぐに携帯が鳴った。私はメール受信音が鳴り終わる前にボタンを押した。待ち焦がれていた浅倉さんからだった。長文メールだった。早く読みたくて、理由が知りたくて十字キーを下へ下へもって行く。速読して、頭が混乱した為、今度は一字一句意味を脳に叩き込みながら解読してみた。
〈今、舞ちゃんと居ます。主婦をやっていたから料理が出来るとの事で手料理を作ってもらってる。あの日は試したみたいでごめんね。チィに逢いたいなんて嘘だろ?ウチ来るって言った時点で軽い女だと思ったよ。皆引いてたよ。俺が好きなのは舞ちゃんなんだ。舞ちゃんも俺の事が好きみたい。さようなら。〉
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