イマージョン
あぁ、またか。私は人を好きになってはいけないのだ。そういう仕組みなのだ。上手く感情が伝えられないから。なぜならアンドロイドだから。浅倉のお陰で、うっかり忘れかけてしまう所だった。それか浅倉の布団で、とろけそうになった時に本当に浅倉と融合して無くなってしまえばよかったのに。そうすれば、舞も私に綺麗な嘘をついて浅倉の家に行かずに済んだのだし、浅倉は溶けて無くなったのだから。手料理?初めて家に上がって手料理を作って私の気持ちを知っておきながら、そんな事をするなんて、どちらが阿婆擦れだろうか。手料理なんて姑息な手、私には到底思いつかない。どちらが計算高いだろう。私は計算などズル賢い事は出来ない。真っ直ぐな気持ちで相手に向かう。好きな人に限っては。それが尻軽呼ばわりされるなら、やはり私はアンドロイドで良かったと思った。あの2人のお陰、いや、私のとった行動は正しかったのだ。不倫しておきながら浅倉という良い鴨を見つけ、バツがついた男が不倫バツ女に好意を持っている。そんな世界、気持ちが悪い。汚らわしい。と言うか、黴菌だ。近寄ったら空気感染して飛沫した菌が肺に入って真の 阿婆擦れになってしまう。まだ私には肺がある。煙草が吸えるから。類は友を呼ぶ。狭い汚らしい世界で生きてくれ。死んでくれ。私が殺しても私の手が汚れてしまうから嫌だ。私は浅倉から来たメールを、そのまま舞に転送した。それきり舞から連絡は来なくなった。