ｲﾏｰｼﾞｮﾝ

〈最近全然お店来ないけど、どうしたの？〉
〈やっぱり体調悪いの？〉
〈出勤する時ﾒｰﾙして〉
多田から同伴料金を貰って久しぶりに店に出勤した。俺、寂しかったんだから。ほんとﾏｼﾞ病院連れてくからさぁ。俺、美優に本気なの分かってよ。本名、美優じゃないんだろ？誰にも言わないから教えてよ。どこに住んでんの？ﾎﾙﾓﾝ焼きの店から、自分の店に着くまで、ずっとあーだこーだ言い続ける多田に流石の美優も苛々していた。お前みたいな加齢臭に本気になる訳ないじゃん。と言うか美優は存在してないんだよ。いい加減気が付けよ。このｽｹｺﾏｼ。美優も美夢も死んだんだよ。黙って酒かっくらってりゃいいんだよ。美優もお前も。久しぶりに来た黒地に薔薇の絵と、ひらひらとしたｼｮｯｷﾝｸﾞﾋﾟﾝｸのﾚｰｽの、しょうもないﾄﾞﾚｽは更に緩くなっていて、事務室の引き出しを漁って安全ﾋﾟﾝを取り出し、背中の辺りをﾋﾟﾝで絞った。しょうもないのはﾄﾞﾚｽで、私の肋と骨盤が浮き出た身体は完璧であって、無駄な物が一切ない。なんて美しいのだろう。あぁ、全裸で歩きたい。一部の脳がそれを拒否している。この面倒くさい脳、どうしてくれよう。