ｲﾏｰｼﾞｮﾝ

苛々しながら多田の待つﾃｰﾌﾞﾙに向かおうとしたら
「美優さん、あっちのﾃｰﾌﾞﾙに先に行って下さい。」
すぐさまﾎﾞｳｲに引き止められた。は？何だよ。うぜーな。などと思いながら、笑顔で了解でーす。と指を刺されたﾃｰﾌﾞﾙを見たら、そこには流香さんと山川が座っていた。そう言えば、そんな奴も居たな。流香さんと居ればいいじゃん。私は、もう多田のお守りで手一杯なんだよ。金の為にﾎﾃﾙに行かなきゃいけないんだよ。体力使うんだよ。もう風俗嬢だかｷｬﾊﾞ嬢だか分からないね。掛け持ちだね。もう面倒くさいんだよ。更にまた面倒くさいのに出逢ってしまったよ。あー面倒くさい。全てが面倒くさくて仕方がない。あー面倒くさい面倒くさい面倒くさい面倒くさい面倒くさい面倒くさい。と、お経の様に頭の中で、面倒くさいﾌﾚｰｽﾞを繰り返しながら山川の所に近づいたら流香さんが私と入れ替わる瞬間に、私を馬鹿にしたような鼻で笑ったような気がしたけれど、それもいちいち気にしていたら面倒くさいので考えるのはやめた。鼻で笑っていいのは私だけなんだよ馬鹿者めが。ああそうか、馬鹿者だから馬鹿者なのか。とだけ考えて席についた。