イマージョン
「あ、美夢さん、おはようございます」
「あ、どうも。おはよう」
エプロンの紐がいつまでたっても縦結びになる不器用さが一向に良くならない、と軽く苛立ちを覚えながら、亜紀を見やる。目が笑っていない。舞の言葉を思い出す。そうだろうか。しかし余り、じっと見つめる事は出来ないので良く分からない。
「いらっしゃいませー」
大きな声で亜紀は張り切って接客をしている。今日も眉間に皺は寄っていない。と同時に私は、このバイトは今までで1番長く続けているのに亜紀のテキパキとした動きを見ていると、私は本当に接客に向いていないな、と一際感じる。まだ入って数日しか経っていないと言うのにテキパキ仕事を、こなして声出しも、しっかりとしていて感心する。感心するなら見習えよ。と自分自身に突っ込みを入れる。
「っしゃいませー!」
太い声が聞こえる方に視線を向けると山下さんまでもが声出しをしているではないか。店長が居た頃は、一切、っしゃいませー!などと言う声は1度も聞いた事が無かった。店長になる前は、2階に、しょっちゅう来て、だりぃ。と言いながら煙草を吸っていたのに。舞も千春も微妙だが、いらっしゃいませと言っている。呆気に取られている時、
「美夢さん」
「はい?」
いつの間にか山下さんが私の傍に来ていた。
「あのさ、俺も細かい事言いたくないんだけど、会社の決まりで声出し強化になったから声出しよろしく」
そう言って売り場に戻って行って、っしゃいませー!と繰り返している。亜紀も、山下さんと同じ位、大きな声で声出しをしている。今までの店の雰囲気は何処へ行ったのだろうか。違う店に居るみたいだ。亜紀は山下さんに張り合う様に、負けじと声を出している。山下さんに気に入られようとしているのだろうか。
「あ、どうも。おはよう」
エプロンの紐がいつまでたっても縦結びになる不器用さが一向に良くならない、と軽く苛立ちを覚えながら、亜紀を見やる。目が笑っていない。舞の言葉を思い出す。そうだろうか。しかし余り、じっと見つめる事は出来ないので良く分からない。
「いらっしゃいませー」
大きな声で亜紀は張り切って接客をしている。今日も眉間に皺は寄っていない。と同時に私は、このバイトは今までで1番長く続けているのに亜紀のテキパキとした動きを見ていると、私は本当に接客に向いていないな、と一際感じる。まだ入って数日しか経っていないと言うのにテキパキ仕事を、こなして声出しも、しっかりとしていて感心する。感心するなら見習えよ。と自分自身に突っ込みを入れる。
「っしゃいませー!」
太い声が聞こえる方に視線を向けると山下さんまでもが声出しをしているではないか。店長が居た頃は、一切、っしゃいませー!などと言う声は1度も聞いた事が無かった。店長になる前は、2階に、しょっちゅう来て、だりぃ。と言いながら煙草を吸っていたのに。舞も千春も微妙だが、いらっしゃいませと言っている。呆気に取られている時、
「美夢さん」
「はい?」
いつの間にか山下さんが私の傍に来ていた。
「あのさ、俺も細かい事言いたくないんだけど、会社の決まりで声出し強化になったから声出しよろしく」
そう言って売り場に戻って行って、っしゃいませー!と繰り返している。亜紀も、山下さんと同じ位、大きな声で声出しをしている。今までの店の雰囲気は何処へ行ったのだろうか。違う店に居るみたいだ。亜紀は山下さんに張り合う様に、負けじと声を出している。山下さんに気に入られようとしているのだろうか。