イマージョン
「そっかぁ…」
思っていた事を一通り話している間、酎ハイを呑みながら眞奈は黙って話しを聞いてくれていた。私は胸の支えが少し取れた。でも色々な事を思い出して、ストレスを感じ自然とバターロールパンに手を出していた。
「美夢って、よく食べるよね」
一瞬ドキッとして口に運びかけていたバターロールパンを食べるのを止めたけれど、 沢山義則の話しをして眞奈に心を許してしまった私は、この際正直に、
「仕事のストレスがパンパなくて過食症になっちゃったの。義則の事とかもあって…」
そう言って口の寸前に有ったバターロールパンを食べ始めた。そうなんだ…大変なんだね…と言い、眞奈は窓際に移動して外を見つめながら酎ハイ片手に煙草を吸っている。眞奈も千春みたいに煙草でお腹が、いっぱいになるのかな。だったら羨ましいよ。でも羨ましくても私は食べる事が止められない。テレビの付いていない静かな夜、塩味お煎餅をバリバリ食べている音が響く。
「…みない?」
「え?」
無心になって食べていた頭と、お煎餅のバリバリと言う音が響いて良く聞き取れなかった。
「優介に電話してみない?」
以外な言葉に驚いた。
「なんで優介くん?」
「義則と友達だから何かいー方法って言ったらおかしいけど、どーにかならないかなって」
眞奈は煙草を吸いながら私の為に色々考えてくれていたんだ…。本当に優しい子。私が義則の顔も見たくないなんて言う卑怯者な奴だから、優介を通してくれるのかな。
「ありがとう…でも出るかな?」
「この時間なら出ると思うよ。ちょっとまってね。ハンズフリーにするからね」
私にも聞こえる様にしてくれた。何て気の利く子なのだろう。私は眞奈を益々好きになってしまいそうだった。折角泊まって良いよと言ってくれたのに、大切な2人の時間が義則の話しに行き付いてしまっただけで迷惑をかけていると言うのに。多分男女問わずに、優介にも、こんな風に優しいのだろうな。私達、姉妹だけれど、お姉さんは眞奈ちゃんだね。
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