イマージョン
塩が付いた人差し指と親指を舐めつつ、緊張しながらコール音を聞く。4コールで「もしもし?どーした?」久しぶりに聞く優介の声が聞こえて来た。眞奈は、私が眞奈に話した事を、そのまま優介に話してくれている。頬に涙が伝う。義則との関係を断ち切って欲しい人任せな気持ちが入り混じった性格の上に2人を巻き込んで、泣けてきた。喉を伝う酎ハイが涙で、しょっぱい。「つー事は美夢ちゃん、そこに居るんだよね?」眞奈は携帯の向きを私の方へ向けてくれた。「うん…」「何で今まで黙ってたの?俺が義則と友達だから?」「それも…ある」「あいつは眞奈と付き合ってたんだから、眞奈と美夢ちゃんだってお互い様じゃん?」改めて言われると恥ずかしくなる。「つまり…何が言いたいかっつーと、俺と義則が友達だからって別れたくても変な気使うなって事よ。気使うより好きでもねーのに付き合ってる方がおかしいだろ?」「あ…うん…そうだよね…でも、もう逢いたくない」「だから、そこまでいくまで溜め込むなって。眞奈だって居るんだから、ちゃんと話そうと思えば話せただろ?」「うん…」眞奈は黙って俯き加減で体育座りをして細い足を抱えて聞いている。「とにかく、俺が何とか話しつけてやんからさ。安心して。あ!電池切れる!ヤバイ!ごめ…」ツーツーツー…。部屋に静寂が戻った。眞奈がヤキモチを妬いていないかが気になった。「優介いーやつでしょ?」「うん。義則と正反対だよ」「あー、あたしも美夢が何で別れたいのかわかるし、あたしもそんなかんじだったから…優介なら何とかしてくれるよ」そう言い残して煙草を吸いにまた、眞奈は窓際に行ってしまった。愛奈が万が一妬きもちを妬いていないか、ずっと心配だったので私は散らかっている写真の中から、お気に入りの1枚を選んで眞奈の隣りに座った。「何やってんのぉー」眞奈は照れている。「ラブラブ」私は2人がキスをしている写真を見せ付けた。眞奈は私を、ど突いた。軽い身体で、ど突かれたので、ちっとも痛くなかったけれど、いたーい!と大袈裟に言った。写真を夜空に照らし合わせながら私も煙草の煙りを吐いた。「あたし優介くん取ったりなんかしないから安心してね」「はー?そんな事気にしてたん?ほんと美夢は気にしぃだなぁ」お互いに笑いながら、肩を寄せ合う。うん。今日も夜空が綺麗だ。
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