イマージョン
「え…どう言う意味ですか」
「もう来なくていいよ」
「何でですか…?」
「どうせ仮病でしょ。無断欠勤もするし、皆に迷惑かかるし、もういいから。そんな人、店に居られても困るから」
私の頭の中かがプツリと切れた。
「あの最後なので、お言葉ですが、言わせて貰いますけど、山下さんも人の事どうこう言えませんよね?」
千春の事と言い、客の愚痴ばかり言っている短気な山下さんも何かが切れた様に言い返す。
「俺、忙しいんだけど。何?人の事言う前に美夢さんは、どうなの?声出しロクにしないし、いつまで休憩してんの?」
もっと短気な私は更に言い返す。最後と知ったから、今まで言いたかった事を言った。
「それは山下さんも同じですよね。店長になられたのに何回煙草吸ってるんですか?千春さんの事だって舞さんからメールで聞きましたけど、寺田さんが大人気ないって言ってましたよ。それから声出しをロクにしないと私に言いましたけど、そう言う山下さんは、前の店長みたいにきちんと仕事をこなしてますか?私には、そう見えないんですけど。バイトはやっちゃいけない発注を亜紀さんにやらせてますよね?上に立つ人なら亜紀さんにだけヒイキしませんよね。私、山下さんにいつも亜紀さんと比べられてましたから。完璧な人と、そうじゃない人って居ますよね?」
殆ど息継ぎ無しで今まで溜めていた事を吐き出した。何やら負けじと山下さんは言い訳の様な事を言っているみたいだが、全て吐き出した私は、もう只のスピーカーから聞こえるノイズにしか聞こえない。私は、もう何も用は無かったのでノイズを割り込んで、
「 お忙しい所すみませんでしたー」
と、嫌みを込めて電話を切った。涙も止まり何だかスッキリしたけれど大人気ないのは私だと思った。自分が悪いのに、また仕事を失った弱い自分にムカついて壁をぶん殴ったらヒビが入った。
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