高校四年生(ラジオドラマ化決定!)



普通、泥が付いてること自体が変なのに、泥付着前提で訊くもんだから不謹慎だと頭で言い聞かせる前に身体は正直だった。


「尚輝、何かおかしいことあったのか?」


運転中は、後部席で起こった出来事は把握しづらい。



「あ、いや別に」


ミラー越に不思議がる遷崎が垣間見え、彼女の方に視線を向けるとこれまた不思議がっていた。


そしてまた文字を打つ。

“日比谷尚輝さん、ありがとう”


「え……」


俺は結果何もしてないのに、お礼言われることなんかしちゃいなのに。で、また文字を見て変に思ったのは俺の名前が漢字で入力されていることだ。


名前なら遷崎に車に連れてこられる前に俺のことを説明してたと思う。


でもいきなり字までは訊くだろうか、訊くのか?遷崎は知ってるから……喋れないから事前に調べたのか?


「あの、どうして名前……字知ってるの?」


初めて桐生美玲本人にしゃべりかけた内容は、変だ。


“クラスメイトだから”

チクンと胸が痛み、それから遷崎の自宅に着くまで沈黙状態に戻ってしまった。俺と桐生美玲がぎこちない雰囲気だと感じても、遷崎は一切間に入らなかった。


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