高校四年生(ラジオドラマ化決定!)



足早に歩を進める彼女の跡を追い掛けていると、彼女は予告なしに急に止まり振り返る。


“1人で大丈夫です、心配なさらず帰って下さい。私は戻らないので”


そう文字で言われた。まるで俺自身を写しているようだ。


俺が止める側で
彼女が離れる側


遷崎に出会う数日前は彼女側の立ち位置、どんなに声を掛けられても1人にして欲しい。弱いからこそ家族から離れたい、迷惑がられるぐらいなら。


故意に心を閉鎖していた。


そして、
家族ではなく
他人に縋(すが)る現実


自分は1人で居たいと周囲に洩らしていても、いざ独りになれば不安と恐怖が押し寄せる。そんな時に否応無しに温もりを与えられたら、心も身体もそこへ向かう。


“1人と独りは違う”


「だったら戻らなくていい、俺も、ついてく。君の心が知りたいから」


俺は彼女を止めることを止めた。


久々に人に興味を持った。


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