高校四年生(ラジオドラマ化決定!)



俺が中学時代、万引きを一度犯してしまった時の担任が中澤真弥(ナカザワ シンヤ)だ。


中澤は、俺を謹慎と反省文の提出だけで退学処分にならないよう校長などに頼み込んだ。


これだけ聞けば中澤は生徒思いの慕われる良い先生として通るだろう。


俺自身も中澤の本性を見るまでは、感謝をして尊敬さえもしていた。当然クラスからの人気も高かった。


何とか高校受験を突破し合格の報告に学校に行った時だ、中澤は教え子と密接な関係を持つ現場を目撃した。


関係を持っていた教え子は俺が中学三年間想いを寄せていたが、万引きした俺なんかが好きになってはいけないと諦めた女の子だった。


初恋の相手が担任と――

自分の知らない所で起きていたなら、ずっと知らないでいた方が良かった。自分が過ちから抜け出そうと必死になってる裏側で中澤は……。


足を滑らせ物音を立ててしまった、当然2人に存在を、盗み見たことを気付かれた。


今にも泣きそうな表情の俺を見て中澤は一言言った。


「悪いな、子供生まれるから俺達結婚するんだ」

何かが砕け散った。
俺は、恋をすることが臆病になる。



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