高校四年生(ラジオドラマ化決定!)



「もう君は此処を辞めた方がいい」


「辛いだけだぞ、通い続けても」


「退学がキツいなら、転校手続きしてあげるから、元々君は優秀だから大丈夫だろう」


「……うーむ」


誰かと話している?
教師同士で『君』は違和感がありすぎる。


取り敢えずノックをして入ろうとドアを叩き、ノブに手を触れると勝手に回り開いた。


反射的に俺は後退りドアを避ける。


校長室から出てきたのは誰か、と目をやると、昨日俺がコンビニから出てきた時に追いかけられていた子。伸びきった前髪で顔が見えず、男か女か区別が出来ない奴と同一人物であった。


数秒、その人物は立ち止まって俺を見ていた――いや、顔が見えないから絶対とは言い切れない。

背丈は俺の脇ぐらい、相変わらずぐしゃぐしゃで泥だらけの髪、垢か砂が入った爪。


この前の制服じゃなくジャージ、しかも学校専用ではなくボロボロに破れた私服の円地色ジャージ。


左右逆で、白のシの字も失った穴が空いた靴下に履き潰されたスリッパ。

それらが原因で、やっぱり異臭がする。


風呂入らないのか、洗濯しないのか、よくこんな格好で学校に来れたもんだなというのが、俺がこの人物に抱いた最初の印象であった。


これじゃあ、いじめの標的には打ってつけだとも納得した。まさか女ではないよな――。


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