高校四年生(ラジオドラマ化決定!)



日比谷家自宅、深夜。

尚輝が家を飛び出し、姉の尚美は残業で深夜の自宅には両親2人きり。


毎夜、寝る前にリビングでテレビを観ながら晩酌している父は、呑み終えると徐に席を立ちスーツのポケットから紙切れをテーブルに置き、流しにいる母を呼び出す。


「母さん、大事な話があるんだ。用事一度止めてこっち来てくれ」


母は洗い物をしている手を止め、渋々父がいるリビングまで行く。


「何よ、改まって怖い顔しちゃって」


「尚輝も家出してしまって、大変な時期だと自覚してるが……」


「何よ、その紙」


2人の視線が一枚の紙、“離婚届”という三文字に誘われる。


「昼に役所から貰ってきた。紀代美、俺と別れてほしい」


冷たい時間は
いつまでも永く
冷めるのを遅らせる



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