LOST MUSIC〜消えない残像〜
すると星羅は、俺の気持ちをよそに、ゆっくりと何歩か前に歩み出る。
一歩一歩夜空に輝く天の川に近付いていくように。
その時耳に届いたのは、本当に微かな擦れ声。
「……あと何回、奏斗と見られるのかな……?」
白いワンピースとしなやかな長い髪が、軽くふわりと風に舞う。
それはまるで、舞い散る桜の花弁――。
その儚い背中は、夜空へ吸い込まれ、溶け込むように薄れていく。
……星羅。
星羅――!
行かないでくれ、俺のところにいてくれよ――!
俺は必死に消えゆく星羅に手を伸ばした――。