LOST MUSIC〜消えない残像〜
「星羅――!」
力一杯叫んだ。
もう手放したくない――。
でも必死に伸ばした手が掴んだのは空ばかり。
肩が大きく上下するほど荒くなった息。
手の甲で額を拭えばじっとりと濡れる冷や汗。
辺りを確認すれば、俺の嫌いな朝の光が部屋に満ち、タオルケットは皺くちゃに蹴り飛ばされていた。
何だ、全部……夢か……。
「何やってんの!遅刻するわよ!」
下から煩いおふくろの声が聞こえる。
現実に引き戻された俺は、覆い被さった前髪を無気力な手でかきあげた。
……そういえば今日は七月七日だ。
だから俺にこんな夢を見せるのか……?