LOST MUSIC〜消えない残像〜


悪夢からの疲労感が支配する体をなんとか動かして、朝の決まり切った準備を機械的にこなしていく。


動いていなければ、心がもっと傷の海に沈んでしまいそうだから――。


そこはどこまでも深く暗く方角もわからない深海のような場所。


重くなった俺の心は、そうやって阻止しなければ底無しの海にどこまでも沈んでいくだろう――。


「ちゃんと朝ご飯食べな!」

「いらねぇよ」


おふくろの言葉に、俺は苛立ちを感じながら返すと家を出た。


外は日差しが肌をさすほどに強く輝き、空は能天気に青々と晴れている。


……憎たらしいほどに……。



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