LOST MUSIC〜消えない残像〜
「あら、奏斗君。おはよう」
俺が隣の家の前に差し掛かったとき、穏やかで凛とした声がした。
――そう、どこか面影を感じる声。
「……おはようございます、おばさん」
栗色のミディアムの髪、色白な肌、どことなく星羅に似ている。
でも、それは当たり前のことだ。
この人が星羅の母親なのだから……。
「奏斗君……、もう音楽はやってないの?」
おばさんは掃き掃除の手を止め、俺の何もない背中を沈んだ表情で見ている。
多分、俺がギターを背負ってないことを気にしているんだろう。
俺がいつもギターを持ってたことくらい、おばさんも知ってるから。