LOST MUSIC〜消えない残像〜


「――あの、もしも星羅のことを」


「違います」


俺はおばさんの言葉を遮った。


その行動が、否定したかっただけなのか、おばさんの言葉の続きが聞きたくなかったのか、自分でもわからない。


ただ衝動的に発してた――。


「もう俺、高二ですよ。夢見てる場合じゃないですから」


俺は無理と笑ってみせた、おばさんにも自分自身にも……。


「そう、なら……、よかったわ。奏斗君はちゃんと自分の人生を歩んでね。星羅もそう思ってるわ」


おばさんは包み込むようにやわらかく笑った。


それに比べて俺はうまく笑うことすらできなかったと思う。


だって、俺だけ、自分の人生を歩めるわけない……。



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